われわれは左半側無視を示すモヤモヤ病による多発性脳梗塞例を対象に,頭部に対する体幹の回旋方向の違いによる線分2等分課題の成績を検討した。症例は40歳の右利き女性で,主病変は右頭頂後頭葉であった。測定条件は,体幹回旋3条件 (右回旋,左回旋,正中) ,呈示空間3条件 (右側,左側,正面) の組み合わせによる9条件とし,それぞれ8試行計72試行について各条件ごとの平均値を求め分析した。その結果,正面および右空間においては体幹回旋による影響が小さかった。左空間においては体幹左回旋時に2等分点が左へ偏位し,この偏位は体幹右回旋および正面時に比べ有意であった (p<0.05) 。すなわち線分に対する視覚的空間の認識は体幹の方向へ依存しており,特に左空間で強く現れる場合があると考えられた。