浜松方式高次脳機能スケール(以下 HHBFS と略す)を用いて,頭部外傷後の記憶と認知機能との急性期回復過程の評価を行った。対象はび漫性軸索損傷(以下 DAI)4例,び漫性脳損傷(以下 DBI)3例,脳震盪症4例である。 HHBFS は初回検査を外傷後健忘消失後7日以内に行い,その後1ヵ月後まで7~10日おき,さらにその後は約3ヵ月まで施行した。全例即時記憶は初回検査時から正常範囲であった。 DAI と DBI 群では,中間期記憶が初回検査時高度障害,2~3週後軽度障害,2~3ヵ月後ほぼ正常の経過をとった。 DBI にともなった前頭葉の小病巣は,中間期記憶が正常化しても前頭前野機能と関連する項目の障害をもたらした。頭部外傷急性期の記憶障害の回復は,外傷後健忘の消失時期には即時記憶が正常範囲の成績であり,その後に中間期記憶の回復が観察された。前頭前野機能と関連する認知障害は,大脳局所の病巣と関連が深く,記憶の回復より遅延す