新造語ジャーゴン10例の経過を,臨床場面と2時点のSLTAにおける変化から分析・比較した。新造語ジャーゴンの改善経過については,新造語の減少と同時に意味性錯語や音韻性錯語が増加し,情報量の多い実用的な発話へと改善することが従来指摘されてきたが,われわれが対象とした10例では改善経過に明らかな差が認められた。複雑な内容の表現が可能となるまでの著明な改善を示した例はわずか1例であり,他の9例は簡単な対話が可能なレベルでプラトーに達していた。 SLTA総合評価尺度の変化でみると,全体的に理解面の回復は良好であったが,発話項目得点の改善は10例中6例に,書字は3例に認められただけであった。また,症例により発話障害のメカニズムが異なる点が新造語の持続状態や内容語の増加の有無から示唆された。