Broca 領野を含む左前頭葉病変により超皮質性感覚失語を呈した症例を経験した。症例は59歳の右利き男性で,CTおよびMRIにより左中前頭回の一部,下前頭回後部および島前部の皮質,およびその皮質下白質に広がる病変が認められた。本症例は自発話,復唱は良好で構音障害はなく,単語の理解は保たれているが文レベルでの理解障害が認められた。なかでも音読は可能であるにもかかわらず意味理解が困難であるという,超皮質性感覚失語像を呈していた。本症例の理解障害は言葉の意味理解の障害のみならず統辞障害がその一因をなしていると考えた。 本邦で近年報告が散見される前頭葉損傷による超皮質性感覚失語は (1) 反響反復言語が著しい症例 (2) 理解障害の著しい症例 (3) 理解障害が軽度な症例,と3群に分類できるのではないかという仮説を提唱した。3群のうち本症例を含め理解障害が軽度である (3) 群はかなり均質な言語的側面を持っていることがうかがえた。