言語理解における階層構造とそれぞれの階層で生じるカテゴリー処理について,私見を提出した。言語理解は相手のアタランスを (1) 自国語か非自国語か, (2) 命令か質問か話しかけか, (3) 実質語はどれで機能語はどれか,(4) 実質語とすれば,どのような意味カテゴリーに属するのか,と範疇を絞り込む形で階層性に進行する。 特定の階層内でのカテゴリー性については名詞の意味構造について理解が進んでいる。著者の経験では身体部位名,屋内部位名,色名などには明らかなカテゴリー性があり,このカテゴリー性は大脳という生物学的制縛条件のなかで成立したものと考えられる。その例として色名と身体部位名について,感覚様式特異性名称操作障害と範疇特異性失語を取り上げた。 理解におけるカテゴリー性のもう1つの側面は特定カテゴリー内の語彙集団における個別的語彙の成立基盤としてのカテゴリー性である。この点について自験例をふまえ,カテゴリー化機能の重要性を指摘した。