ジャルゴンを呈した失語の3症例を報告した。症例 TY と KS の発話は音韻的には比較的明瞭で表記可能であったが,ほとんどが新造語で占められるジャルゴンであった。しかし,明らかな文法的機能語が認められず,正常の文構造が崩壊している点で,通常の新造語ジャルゴンとは異なると考えられた。これに対して,症例KHの発話は音節の分離さえ不明瞭な,ほとんど表記不能なジャルゴンであった。未分化ジャルゴンの概念は混乱しているため,TY および KS の発話を音節性ジャルゴン,KH の発話を表記不能型ジャルゴンと呼ぶことを提唱した。また,音節性ジャルゴン,表記不能型ジャルゴン,新造語ジャルゴンの3者について,その責任病巣や成立機序の違いを考察した。