脳血管障害例における注意障害と,そのリハビリテーションを検討し,以下の点を指摘した。 (1) 脳血管障害では,左右半球のどちらが損傷されても注意障害が生じるが,リハビリテーションが難渋させられるものは,右半球損傷例に多く,またその場合も,注意障害が多彩な劣位半球症状と一体化した形で現れる点が特徴的と考えられる。脳血管障害例の注意障害に対しては,このような実状をふまえて治療プログラムをたてる必要がある。 (2) pacingの障害を検出するために,左右半球損傷のいずれにも適用できる図形のトレース課題を考案し,かかる障害が右半球損傷例に特異的な症状である点を示唆した。 (3) 注意障害を呈した亜急性期ならびに慢性期の右半球損傷例に対するリハビリ訓練の実際を紹介し,その有効性について,若干の考察を述べた。