呼称が困難である単語を音読させた後,絵を呈示して反復呼称させると当初の正しい音韻が徐々に変化し最終的に新造語化するという感覚性失語症例を経験した。本例に対し音節数の異なる名詞と動詞を用いて音読後音韻変化を生ずるまでの反復回数・時間を調査し,これらの知見を基に情報処理モデルから本症状の生起する機序についての考察を試みた。結果,音節数と音韻変化率に関連がみられたが,品詞による差は認められなかった。本例においては事前刺激をもってしても十分な活性化が得られないほどの音韻プロセッサーの機能不全,および聴覚系をはじめとする各モジュール間の情報のフィードバック不全が本症状を生起させる原因となっていると推察された。