個々の視覚失認症状を有する患者は右または (および) 左の後頭葉病巣を有し,これに基づくいくつかの視知覚障害を併せ持っている。本稿では個々の視覚失認症状とこれに相当すると思われる視知覚障害との関係を,われわれがこれまでに報告した 13症例において検討した。 (1) 相貌失認の患者では未知相貌の弁別・学習障害が認められることが多いが,両者が解離する症例は決して少なくない。 (2) 視覚性物体失認の患者は連合型症例をも含めて,図形模写や錯綜図認知の障害を呈することが多い。しかし,これらの視知覚障害によって失認症状を説明することはできない。 (3) 色彩失名辞の患者には微妙な色覚の歪みが観察されるが,この色覚の歪みは色彩失名辞だけと関連している訳ではない。 視覚失認症例における視知覚障害の検討は今後さらに検討されるべきものである。