アルツハイマー病 (AD) 患者の言語障害を WAB 失語症検査の日本語版を用いて検討した。対象は NINCDS-ADRDA の Probable AD の基準を満たした連続症例のうち右利き,教育歴6年以上,80歳以下の156名と健常高齢者16名である。患者群の失語指数 (AQ) の平均値±SD は 78.9±11.1,健常高齢者群は96.0±2.9であった。患者群の AQ とすべての下位項目の成績は健常高齢者群に比べて有意に低く,MMSE,ADAS,CDR と有意に相関していた。AD 患者の言語障害には流暢な発話,比較的良好な復唱と聴理解,顕著な喚語障害と読み書き障害という特徴があった。対象患者のうち123例は健忘失語,14例は Wernicke失語,11例は超皮質性感覚失語,2例は伝導失語に分類されたが,6例は古典的な失語の範疇ではとらえられなかった。