伝導失語の1例の経過に基づき,音韻性錯語の誤りパターンが経時的に変化する可能性について検討した。復唱課題を1週間おきに7回行った結果,誤りの出現位置,子音/母音比,類似音の比率が徐々に変化する傾向がみられた。ここから誤りパターンは経時的に変化する場合があることが示唆された。しかし先行症例との比較では一致したパターンはほとんどみられず,変化の規則性については明らかとはならなかった。変化が徐々に進んだことからこれらは障害された音韻の実現機構が改善に向かう間の状態を反映して生じたものであると考えられた。