左頭頂・後頭葉皮質下出血により身体パラフレニア (somatoparaphrenia : SP) を呈した症例を報告した。78歳の右利き女性が頭痛,右片麻痺,嘔吐にて発症し,錯乱状態となった。定位脳内血腫除去術施行後,発話の回復に伴って右上肢を「おじいさんの手」と呼ぶ SP を認め,約7ヵ月間持続した。右大脳半球損傷の場合とは片麻痺,感覚障害,半側空間無視 (以下 USN) ,精神症状 (情動失禁,脱抑制,易疲労性,性格変化,見当識障害など) を伴っていた点で共通していたが,流暢性失語,構成失書,観念運動失行,手指構成障害,口部顔面失行を伴い色彩失認が疑われた点で異なっていた。左大脳半球損傷であっても,片麻痺や感覚障害に USN,精神症状などが関連して SP が生じうることを示唆する症例であると考えられた。