Positron emission tomography (PET) による脳血流賦活測定で用いられる動詞生成課題は,視覚的・聴覚的に呈示された名詞と意味的に関連する動詞を想起させる課題で,安静閉眼や復唱などのコントロール課題と比較して,課題間のCBFの差分画像を統計的に解析して賦活領域を検出する。動詞生成と安静との比較では,刺激入力,聴覚・視覚的解析,入力系の辞書的処理,意味処理,語想起,出力系の辞書的処理過程や記憶などの中枢処理系全般に関与する領域が観察される。右利きの健常人を対象とした欧米や日本の研究では,左下前頭回,左前頭前野,左上・中側頭回,左島回,両側補足運動野,両側帯状回,両側眼窩回,両側小脳半球,小脳虫部,脳幹などの賦活を認めた。左上・中側頭回や左下前頭回は従来の臨床病理学的研究から古典的言語領域とされており,多くの言語圏において動詞生成にかかわる重要な領域であると考えられる。さらに動詞生成には,古典的言語領域以外の左大脳半球領域や,補足運動野,帯状回,小脳半球,脳幹などの領域も広範囲にかかわる可能性が示唆された。