失語と共に特異的な反響言語を呈したPick病と思われる1例を経験した。症例は67歳右利き女性。入院時はSchneiderおよびBraunmuhlらのPick病の病期分類の第2期にあたり,約1年後に第3期へと移行し,本症例の言語症状の特徴は以下のとおりであった。 (1) 入院時は中~重度の混合型超皮質性失語を呈し,その後無言症となった。 (2) 本症例の反響言語は,減弱型,部分型,完全型反響言語がみられ,それらは「努力性反響言語 (effortful echolalia) 」 (波多野ら 1994) の範疇に入ると思われた。また語頭音を繰り返す反響言語の存在も示された。 (3) 脳血管障害における反響言語の系列変化は減弱型→完全型→部分型がみられるが,本症例においては3つの型が同時期に混在し,そして部分型の優勢な時期を経て無言症へと移行した。変性疾患において3つの型が同時に混在する場合があることが示された。