アルツハイマー病 (AD) 患者の談話から聞き手が受ける異質な印象を明らかにするために,軽度AD患者の談話の特徴を,高齢健常者,失語症患者との比較で検討した。軽度AD患者,高齢健常者,失語症患者 15名ずつに,情景画の叙述課題および手順の説明課題を実施し,得られた談話を,課題の「理解」,課題への「取り組み」,「主題の表出」,「推測」による情報の付加,課題からの話の「逸脱」,手順に必要な「ステップの表出」,順序立てた説明の「構成」などの項目を含む,新たに作成した評定法を用いて分析した。その結果,ほぼすべての項目について,軽度AD患者の談話と高齢健常者の談話との相違がみられた。また,「理解」,「取り組み」,「逸脱」などの項目については,AD患者の談話と失語症患者の談話との相違が明らかになった。