疾病無関心は右半球損傷でおこると考えられているが,左半球損傷の失語症例で,言語障害への無関心を示し,言語訓練へのニーズがなかった4例を報告した.この4例には無関心をひきおこしやすいと考えられる諸要因は含まれていない.全例,話量多くないが流暢で努力感ない自発語で,書字を除き回復は割合良好であった.障害の自覚は,2例で初期に否定,後に4例共,具体的に低下部分を指摘されれば認めるようになった.しかし,困惑感なく平然としている点は変化なし。3例で情動異常を伴っており,また,右片麻痺のある2例では2例共,病初期に麻痺の無視を示した.4例の病巣は全て左半球皮質下であった.このような情動変化,右側無視を伴った無関心は,左半球皮質下構造が損傷を受けた結果生じた注意障害によるものと考えた.さらに,4例の発語特徴より, fluent な自発語が無関心の発現に何らかの影響を持つのではないかと考えた.