一側性空間無視がどの機能水準の障害であるのかを明らかにするため視覚弁別課題を用いて検討し,あわせて視覚弁別過程での刺激提示空間の影響についても検討した.対象は一側性空間無視を示す右大脳半球病巣をもつ5名の右利き男性である.被験者の課題は左・右・正中それぞれの空間に上下に同時に提示された2つの図形の組が同じか異なるかを判断し,口頭言語にて答えることである.今回の課題では,すべての被験者が刺激提示空間にかかわらず一側性空間無視を示し,刺激提示空間による影響は明らかでなかった.以上の結果から,一側性空間無視は視知覚あるいはそれに続く処理の過程での障害により生じる症候であり,反応という出力過程に発現機序を求めるのは不適切であることが示唆された.また,刺激提示空間にかかわらず一側性空間無視が現れるという性質は明らかとなったが,無視の量の変化という問題はさらに検討が必要であると考えられた.