6つの下位テストから構成した高次脳機能スケール(higher brain function scale 以下 HBF スケールと略す) を用いて, 脳障害患者の経時的評価を行った.又長谷川式痴呆診査スケール (以下 HDR スケールと略す) や WAIS との比較も検討した.痴呆例や意識障害をもつ例では数唱問題以外はほとんど 0点となるパターンであった.痴呆例は, 経時的な検査でもこのパターンに変化はなかったが, 意識障害が回復していく例では, 記銘・記憶障害がまず回復し, 5単語の5分後の再生, 7シリーズなどの得点が上昇した.しかしより高次の脳機能を必要としていると推測される語の列挙, 類似問題, 仮名ひろいテストに成績不良を認める症例が多かった.局所病巣例の慢性期では, 前頭葉病巣例では仮名ひろいテストが特に低下する傾向を持ち, 側頭葉病巣例では5分後再生が障害されていた.これらの所見は病巣の局在と関係することが示唆された.