慢性期の重度の失語症患者四例に対して, 本邦唯一のセマントグラフィである「LoCoS」を使用した visual communication therapy を実施した. セラピイの第一段階として「LoCoS」より六十語を選択し語彙学習を行ったが, 四例のうち二例はこれを完全に学習した. 一例は不十分ながら一定の語彙の習得が可能であった. 残る一例は保続の頻出のため訓練の継続が困難となった. しかし, この訓練中止例と学習完成例二例において, 自ら何らかのシンボルを作り出すという行動が訓練途中より出現した. visual communication therapy の一つの大きな意味はこのような患者の自発的なシンボルの生成能力を引き出すところに見いだされるのかもしれない.