Landau-Kleffner 症候群 (LKS) の 8歳男児例を報告した.言語的には語音認知以外に楽音や環境音認知の障害も見られ、広義の聴覚失認の病像と考えられた.言語機能低下と多動との間に相関が認められ,両者ともメチルフェニデートにより改善し、ジアゼパムにより増悪した.これらの薬剤は vigilance の変動に左右して症状に影響していると椎測される. LKS の病因については従来、てんかん性異常による言語機能の選択的抑制説と限局性脳炎説という 2つの仮説が提示されてきた.本症例では言語機能の変動と脳波上の変化が相関せず、てんかん性異常波により直接的に言語機能が抑制されるという仮説は支持されなかった.一方,画像診断上,限局性脳炎を示唆する所見は得られず、むしろ聴覚機能に変動を認めることや脳波上多焦点性の異常を認めることからは側頭葉に限局しない,より広い系の機能異常が想定される.ひとつの系として皮質—皮質下—網様体系の障害を考えることも可能である.