吃音の既往を持つ,右利き男性2症例に失語の発症をみた.症例1はウエルニッケ失語で,聴覚理解力の著名な低下と病識が欠如した際,一時的に吃音の消失をみたが,失語の改善に伴い吃音が再現した.症例2はブローカ失語の発症で,聴覚理解良好,病識もあって吃音は不変であった. この2症例を検討した結果,吃音の現象に聴覚理解力と病識がことばの表出の monitoring system として関係しており,これらの相互関係が吃音を生じる一定の条件を形成していると考えた. 従来より唱えられている大脳半球優位性の未確立による半球間競合という大脳半球優位支配説のみでは説明不十分であることが,示唆された.