症例は67才,右利き,男性.右半球に陳旧性病巣を持ち,左縁上回病巣の梗塞で失語症を呈した.症状は,理解良好で,発語,特に呼称・復唱など意図的な発語に障害が顕著であったことから伝導失語と診断した.しかし,音の誤り方は特異で,目標語の語尾に新造語が付加され,音節数の増加したジヤーゴンになることが多かった (例 : サイフ…サイフサグ) .これらのジヤーゴンの成立機転について若干の考察を加えた.そして,右半球陳旧性病巣の関与が無視できない可能性を指摘した.また,伝導失語弓状束原因説についても考察を加え,弓状束説では最近の音韻学的データの多様性を矛盾なく説明するのは困難であるとの考えを述べた.