近年、ラオスでは保健政策・戦略の整備が進んできた。すなわち、「保健戦略2020」(2000年)に加えて、2002年にはJICA開発調査により「保健マスタープラン(MP)」が作成され、さらに2003年にはラオス版PRSPである「国家成長貧困根絶戦略(NGPES)」が策定されている。これらの保健政策・戦略の内容はほぼ類似しているにも関らず、これまでその整理や統合はされておらず、いずれもが実施には至っていない。現在、次期社会経済開発5ヵ年計画が策定されているが、保健セクターにおいてもNGPES、MP等との整合を図りつつ、統一した重点政策、戦略を示して、速やかに実施に進まねばならない。 一方、これまで垂直プログラムによる援助が中心であったラオスでも、Global Alliance for Vaccine Iniciative(GAVI)やグローバルファンドなど官民パートナーシッププログラムが導入されてきた。これらはそれぞれドナー間調整委員会(ICC)や国別調整メカニズム(CCM)という調整メカニズムを併せて導入してきた。しかしながら、調整範囲はプログラム内に限られており、マネジメント能力に問題があり、とりわけ財政の不透明な体制ではその実施は容易ではない。また、これらの導入後、二国間援助の撤退が続き、基金への依存の高まりや現場レベルでの技術的サポートがないための問題等も発生している。 今後、垂直プログラムやパートナーシップ協力による問題を解決し、速やかに重点政策の策定、実施に移るには、保健省各局間、ドナー間の調整が鍵となるが、保健省の調整能力は非常に弱く、2004年より開始された「保健セクタードナー調整会議」や「調整のためのワーキングループ会議」も、現時点では有効にその機能を発揮していない。 日本はこれまでプロジェクトを基本として協力を行い、援助調整に果たす役割は十分でない場合もあった。今後のパートナーシップ協力の時代において、日本はラオス国の重点保健政策の中で日本の援助戦略を明確化し、ラオスの政策実現のための方策をプロジェクトなど具体的活動を通じて、調整メカニズムを促進させつつ示すことが必要である。そのためには保健省アドバイザーが果たす役割はさらに重要なものとなるが、その役割をより効果的にするため、アドバイザー活動の一部をプロジェクト化する試みについても言及した。