本研究は、在日コリアン高齢者の介護保険サービス利用意向に関連する要因分析を行い、介護保険サービスに対する認識とニーズを明らかにすることを目的とした。 東京都A区の在日コリアン高齢者民族団体所属会員のうち、65歳以上の会員全員に調査票による訪問面接調査を行った。調査項目は介護保険サービスの利用意向の有無と(1)素因(基本属性・日本語のコミュニケーション能力・家族介護指向)(2)利用促進・阻害要因(サービス周知度・経済状況・公的年金受給の有無・サービス利用実績)(3)ニード要因(主観的健康感・ADL・IADL)とした。 χ 2検定により、利用意向の有無とすべての項目との関連を検討した。 分析対象者78名の特徴として、在日2世高齢者が35.9%含まれていたこと、家族介護指向が強いこと、識字能力に幅があること、無年金者が26.3%存在したことが挙げられた。69.2%が利用意向を示し、家族介護指向と経済状況との関連において有意差が認められた。介護の社会化を肯定的に受け入れており、自宅において家族中心で外部のサービスも取り入れるという介護を望む者が多かった。年金受給の有無と経済状況・年齢に有意な関連があり、高齢で無年金の在日コリアンにとって、介護保険料・利用料の負担は日本人高齢者以上に大きく、必要なサービスを抑制する可能性が示唆された。サービスへのアクセスを容易にできるような支援体制の整備、個々人の介護ニーズに対応した包括的な援助が望まれる。