目的 本研究は、(1)開発途上国で看護技術移転に関わる、あるいは関わった日本人国際看護コラボレーターが認識する、活動上の課題・問題と継続学習のニーズを明らかにし、国際看護コラボレーターに必要な能力モデルを構築すること、(2)国際看護コラボレーターに必要な能力を育成する教育プログラム(大学院修士課程レベル)を開発すること、の2点を目的に調査を行った。 方法 開発途上国で1年以上国際看護協力の活動に関わった者、あるいは関わっている専門家で研究協力を承諾した者27名を対象とし、研究者らが作成したインタビューガイドに基づき半構成的個別面接を行った。インタビューデータの内容分析を行い、カテゴリーを抽出、国際看護コラボレーターに必要とされる能力の視点から構造化を行った。このモデルをもとに教育プログラム案を作成し、その妥当性を検討するため国際看護の大学院教育を行なっている2大学の教育プログラムについてインタビュー調査を行った。 結果 分析の結果、活動前準備段階、活動期、活動後の各期において、国際看護コラボレーターに必要な能力、および活動への影響要因として55カテゴリーが抽出された。これらは大きく、「基礎的資質と知識」と「国際協力を展開する上で求められる能力」に大別され、「基礎的資質と知識」には、異文化と折りあう力、語学力、学際的知識など9カテゴリーが該当した。「国際協力を展開する上で求められる能力」は、個人的能力と協働実践能力に分類され、個人的能力には人間関係構築力、役割認識、などの7カテゴリー、協働実践能力には協力活動の局面や、活動領域、役割に応じ必要となる能力23カテゴリーが分類された。またコラボレーション活動の「影響要因」として、相手国の背景・体制、看護の背景や地位など6要因16カテゴリーが分類された。以上の調査結果および英国2大学における調査結果を基に、教育目標7項目を定めた教育プログラムを作成した。 考察 本研究で構築した国際看護コラボレーター能力モデルの構成要素は、すでに先行研究で指摘された項目も多く包含し、内容の妥当性が確保されたといえる。本研究で活動展開時期ごとに必要とされる技術・能力の構造化を行ったことは、コラボレーターの育成において具体的示唆を与えると考えられる。