目的 多くの開発途上国が今後人口の急速な高齢化に直面する。本稿はメキシコを対象として、高齢者への公的支援のうち、その自活期間の延伸を目指す社会参加支援の実情を明らかにする。 方法 国立高齢者機構(INAPAM)が首都で運営する高齢者文化センターを調査の対象とした。サービスの提供に関しては、職員からの聞き取りや高齢者のための活動の参加観察を実施したほか、 INAPAMが発行する資料の収集・分析を行なった。サービスの利用に関しては、利用者である高齢者に対して質問紙調査を行なった。主な質問内容は文化センターの活動に参加した動機、参加により得られたこと、日常生活や高齢期の目標についてであった。 結果と考察 文化センターでは様々な講座が自立高齢者向けに開講されており、身体的機能の維持・向上、作業療法の効果、知的好奇心の喚起、老化に対応するための精神的構築が目指されていた。講座の多様性は多くの高齢者の興味を引き、その活動意欲を引き出すことに貢献していた。また、各講座の専門性のほか、老年学の研修を受けた各講師に対する利用者の満足度も高いと推察された。立地の良さ、受講料の低さ、平日通年の開講スタイル、様々なイベントの開催などにより、文化センターは高齢者にとって日常的で快適な共生の場になっていた。高齢者各自が興味を持って継続できる活動に能動的に参加することは、その心身の健康の維持・増進に大いに寄与する。文化センターのサービスはこのような考えに基づいて提供されていた。利用者はその考えを理解し、実践して、高齢期を非常に前向きにとらえていた。 結論 高齢者社会参加支援の有用性は先行研究によっても確認されているが、メキシコにおける大きな課題は文化センター水準のサービスをいかに全国のより多くの高齢者に提供するかであろう。そのためには、 INAPAMや地方公共団体、民間団体、個人ボランティア間の連携・協力がより必要になってくるであろう。