背景 ザンビアはアフリカ大陸南方に位置する内陸国である。日本の約2倍の面積を有し、人口は約1200万人、多くの部族が共存する。乳児死亡率は102, 5歳未満児死亡率182(対出生千人)と小児の健康水準は非常に低い。アフリカ諸国における、小児の健康状態と母親の教育レベルとの関連を示す研究はこれまでも幾つかあったが、その結果は必ずしも一定のものではなく、ザンビアにおける研究はほとんど存在しなかった。また、地域保健医療サービスと小児の健康状態との関連性についても、ザンビアにおける考察が少ないという現状がある。 目的 ザンビアの農村において、母親の教育とアウトリーチサービスが小児の死亡率に与える影響を明らかにする。 方法 ザンビアの首都ルサカから70km程北に位置する農村、モンボシ地区にて5歳以下の子どもをもつ母親73人に対し、インタビューを行った。これまでに亡くなった子どもについて及び、母親の教育歴や保健知識と、情報の入手源等について尋ねた。同時に母親の識字率についても、ボードに書かれたある指示を理解できるかどうか確認するという方法で、調査を行った。 小児の死亡率は、これまでに各世帯で亡くなった子どもの数と世帯中の子どもの数から算出した。また、この地域では、アウトリーチプログラムといい、最寄りのヘルスセンターの医療者が月に一度モンボシ地区に赴き、出張診療、健康診断等を行っている。 結果 これまでに学校教育を受けたことのある母親は80%、全く受けたことのない母親は20%であり、母親の教育の有無と小児の死亡率の関係は有意であった(p=0.015)。つまり、教育を受けたことのある母親の子どもほど、死亡数が少なかった。母親の識字率は42.9%であり、母親の識字率と小児の死亡率に関しても、識字能力がある母親の子どもほど死亡数が少ないという傾向があった。また、アウトリーチプログラムから健康に関する情報を得ているとした母親と小児の死亡率に関しても、有意であった。(p=0.019) 母親の年齢による結果への影響を考慮し、30歳未満と30歳以上とに層別化し、解析を行った結果、母親の教育やアウトリーチプログラムは、より若い母親に対して影響が大きいことが示唆された。 結論 女性への教育と地域でのアウトリーチサービスは、小児の健康において重要であり、それぞれ小児の死亡率を下げることがわかった。女児の教育の機会を増やすと同時に、地域の人的資源を活用した地域保健医療システムの構築が必要である。