目的 現在、カンボジアでは、国内での食糧生産は十分ではない。筆者が所属しているアジア農村協力ネットワーク岡山は、現地NGOである、Cambodian Federal Farmers Organizationと協働し農業プロジェクトを行っている。カンボジアには農村部および、都市部の貧困層においては栄養不良との関連が考えられる疾病がある。これらの問題を緩和するために、またカンボジアの社会がより持続可能なものとなるために、野菜栽培を中心にした農業振興の重要性について調査した。 方法 カンボジアの農業事情を調べるために、首都プノンペンの市場を2カ所見学した。次にコンポンチャム州にて農地の利用状況を視察した。また、農村部の市場と、農家を訪問し、農村部での日常の食事について調査した。農業生産については農林省統計を調べた。栄養不良の状況は関連文献を調べた。 結果 プノンペンでは、生鮮野菜が毎日大量に販売されていたが、ほとんどべトナムからの輸入品であった。主食の米に関しては農村部では灌漑が少なく稲単作の地域が多く、技術的にも問題があるものの、米の生産量は満たされていた。また近年、バイオ燃料の需要増大に伴い、キャッサバ栽培が増えていた。またべトナムからの食品輸入について、カンボジア人はあまり好印象を持っておらず、農薬問題や、鮮度に不満を持っていることがわかった。プノンペンにおいてスーパーやレストランの経営者は国産品を希望していた。農村でも野菜の生産、消費ともにわずかであった。普段は大量の米飯と塩辛い小魚の干物、少量のハーブ類を摂取しており、野菜は贅沢品であった。また栄養不良による障害が多く報告されていた。 結語 カンボジアでは輸入品である野菜は高価というイメージであり、日常的な摂食は少ない。米の多食と栄養バランスに問題がある食事により栄養不良が多くみられ、改善の必要性は大きい。また農業振興は今後のカンボジアの発展には非常に重要であると考えられる。