目的 本研究はタイの東北部のHIVと共に生きる人々(people living with HIV、以下PLHIV)における抗HIV薬多剤併用療法(highly-active antiretroviral therapy、以下HAART) の受療と安全な性行動との関連を明らかにすることを目的とする。 方法 東北タイに位置する公立病院に外来受診をしていたPLHIVを対象に、質問票による面接調査と自記式質問票によりデータを収集した。調査期間は2004年3月から2005年1月であった。フィッシャーの正確確率とロジスティック回帰分析により、配偶者あるいはパートナーとの性行為時におけるコンドームの使用に関連する要因について分析をした。 結果 289人から調査協力が得られた。そのうち146人はHAART受療者で143人は非受療者であった。289人中122人が調査前3ヶ月間において配偶者又はパートナーとの性行為をしたと回答した。その際のコンドームの使用頻度については、70人が「毎回」、17人が「時々」、32人が「全く使用せず」、3人が「不明」であった。 回答に不備があった6人を除いた116人を対象に、性別、学歴、就業状況、HIV感染からの期間、調査前1ヶ月間の疾病の有無、HAARTの受療を説明変数として、コンドーム使用頻度(「毎回」/「時々又は全く使用せず」)に関するロジスティック回帰分析を行った。「HAARTを受療中」(オッズ比=9.8, 95%CI: 2.9-32.9)、「就業中」(オッズ比=5.2, 95%CI: 1.3-20.9)と「毎回コンドームを使用」との間に有意な関連が認められた。 結論 HAARTの受療は、PLHIVが配偶者やパートナーと性行為をする際のコンドームの高い使用頻度と関連していた。