目的 国際協力活動における研修終了後のフォロアップの機会は限られており、研修が中・長期的なインパクトを与えるために研修で学んだ内容を実践につなげられたのか、また研修の成果である活動計画を帰国後に実施する上での課題は何か、を研修実施機関が知り、後続の研修に活かせる機会は少ない。仏語圏アフリカ諸国を対象とし日本で実施された母子保健集団研修を例にとり、研修実施機関による研修フォロアップとその介入活動を通じて研修がより有効になるための条件を考察したので報告する。 方法 研修実施機関の研修実施者が、研修終了後にセネガル・ベナンの2カ国を訪問し、研修参加者と現場の日本人を含む関係者に対して、研修終了時に作られた活動計画の実施状況と実施に関わる問題点に関して面接を実施した。面接結果に基づき研修参加者の活動計画実施に寄与した要因を分析し、訪問中に研修参加者や関係者との協議などの介入を行った。 結果 セネガルでは過去の研修参加者が本邦研修で立案した活動計画は、所属する組織や現地で実施中のJICAプロジェクトに共有されず、実現には至っていなかった。研修実施者によるフォロアップを通じて関係者が一堂に会する機会を設け、プロジェクトのコンセプトや実現しようとしているケアのモデルを図式化するという介入を行った。その結果、研修参加者が作成した活動計画をプロジェクト活動の中に組み込み、実施する見通しが立てられるようになった。また組織の長がプロジェクト活動における研修の位置付けや目的を理解し、研修員の人選から戦略的に関わることの効果も示唆された。 ベナンの研修参加者は、基幹病院からの意思決定者であり、病院運営改善の取り組みの中で帰国後に研修で学んだ「人間的な出産ケア」を実行していた。研修実施者が訪問時に行ったのは研修参加者や現場のスタッフの努力を評価し、支持することであった。研修後に自分たちで主体的に方向性を見出して活動計画を実行し始めても、継続することが困難な場合も多く、研修実施機関からのフォロアップが研修参加者たちを支援する役割を果たすことが示された。 結語 国際協力活動の中で研修が効果を上げていくためには、現地での協力事業の戦略が立てられていること、その中での研修の位置づけが明確になること、が前提条件と考えられた。それを踏まえて、研修参加者の戦略的な選定、研修後のフォロアップの準備が可能になると思われる。ここに研修実施者による介入が加わればさらに研修の効果が期待できるであろう。