JICAソロモン国マラリア対策強化プロジェクトは2010年1月に作業を完了し、業務完了報告書を作成した。この資料は報告書の「教訓と提言」に加筆したものである。他の途上国と同様にソロモン諸島でもマラリアサービスが末端まで提供されず、サービスへのアクセスから隔離された地域ではマラリアに感染すると重症化しやすく、死亡率も高い。この資料では、医療従事者の再研修や運用面での改良などシステムの強化とコミュニティのオーナーシップの醸成、加えて、医療者の臨機応変な判断力と使命感の大切さを強調した。さらに、医療資源に制限のある途上国で過剰のプロジェクトを自力で運営するには限界がある。当該国に適正サイズのプロジェクトの導入を提言した。 20世紀末にスタートしたロールバックマラリア計画では1990年のマラリア負担を基準に2010年までに半減すること数値目標とし、ミレニアム開発目標では、その数値を採用した。一方、2008年に発表したMAP((Malaria Action Plan)では中期目標として2015年までにマラリア死亡をゼロに近づけると、ハードルを一気に高く設定した。その背景にはさまざまな意図や思惑がみえる。国際保健の領域では10年周期で潮流が変動しており、新しい流れが目前に迫っている。新しい潮流が途上国に有益なものか否かは慎重に見極めなくてはならない。