目的 在日外国人女性の日本での妊娠・出産・育児の困難と、それを乗り越える方略を明らかにする。 方法 日本で出産、子育てを経験した外国人18名を対象に半構成的面接を行った。妊娠、出産と育児について、健康診断や予防接種などの受診状況や困ったこと、問題をどう克服したかなどについて自由に語ってもらった。 逐語録から、テーマについての文脈を取り出しコード化した。コードの意味内容から類似性のあるものを集めてサブカテゴリを作り、抽象度の高いカテゴリを作成、コアカテゴリを抽出した。 結果 在日外国人女性の妊娠・出産・育児の困難では、≪育児の不安・ストレス≫、≪周りとのつながりの問題≫、≪社会・経済的問題≫、≪妊娠・出産・病気の不安≫、≪日本語による情報伝達困難に起因する問題≫、≪日本の保健医療についての理解の困難≫、≪出産国の選択≫の7つのコアカテゴリが、困難を乗り越える方略では≪自分で何とかする≫、≪家族に助けてもらう≫、≪友人や近所の人に助けてもらう≫、≪感情の表出≫、≪通訳の利用≫、≪日本の保健医療システムの利用≫、≪日本以外の保健医療システムの利用≫、≪やり過ごす≫の8つのコアカテゴリが抽出された。 このコアカテゴリは次のように構造化できた。困難への対処方略の核は家族である。≪家族に助けてもらう≫中で≪自分で何とかする≫努力をする。受診を控えるなど≪やり過ごす≫こともあるが、十分な助けが得られれば、≪自分で何とかする≫方略へと移行することが可能である。家族で対処困難になると、直接あるいは友人や通訳の助けを得て、日本または日本以外の保健医療システムの利用を通じて専門家の助けを求めていた。 結論 外国人が保健医療にアクセスする際、日常の言葉以外にも、専門用語やシステムの理解といったヘルスリテラシーが必要となる。≪自分で何とかする≫女性の方略を支援するために、彼らの方略を理解し、強化する工夫が必要である。外国人女性は家族や友人などの支援を得て困難を乗り越えていたが、支援を得られにくい女性についてはネットワークづくりや保健医療従事者の積極的な介入が求められる。≪やり過ごす≫といったネガティブな方略や≪日本以外の保健医療システムの利用≫は、日本社会適応段階の途中とも考えられ、保健医療従事者は一概にその行動を否定するのでなく、不安を軽減するための方法として捉え、支援する必要がある。