目的 兵庫県内の医療機関に対し、外国人の受診状況や現状の対応方法、その問題点と今後の課題の明確化を目的に調査を行った。 方法 兵庫県内の医療機関352施設(20床以上)の職員を対象に、2010年2月1日から3月31日までの期間で、郵送による自記式質問紙調査を実施した。調査票は、総数2100枚を送付した。主な調査項目は、外国語を使用した場面と頻度、実際の外国人への対応内容と苦慮した点、外国人向け医療についての意見等である。 結果 調査票の回収は76施設(回収率21.6%)、有効回答者数は320名(調査票回収率15.2%)であった。診療やケアにおける外国語使用状況として、10%程度が月に1回以上対応しており、英語以外に使用する外国語は、中国語や韓国等のアジア圏の言語が多かった。対応に苦慮している点として、診察やケアでの直接的な意思伝達に関する回答が多く、院内掲示や書類における外国語対応の不整備の課題も挙がっており、地域や国全体で共通して使用できる対応資料の作成、相談窓口や通訳派遣などの組織的支援に関するニーズが多くみられた。 考察 医療機関側では、様々な対応策が必要と認識し、取り組みを始めている医療機関もあった。しかし、病院単独での外国語対応能力について限りがあることを訴えている一方、外国人医療に対する公的な活動支援組織についての認知度は高いとは言い難い現状にあった。現状の多言語対応に関する課題を円滑に解決するためには、医療機関のみの対策だけでなく、国、自治体、NPOなどの多様な組織間での実務的な連携基盤が求められており、医療通訳認定制度をはじめとする、外国人医療に対する社会施策を早期に検討、実践することが望ましいと考えられた。