日本人に比して在住外国人は乳児死亡率に代表される母子保健指標は悪く、母子保健サービスの利用率も悪い。その原因として、様々な母子保健制度の存在そのものがわからないこと、活用方法がわからないことなどがあげられている。本研究では、外国人が総人口に多く占める愛知県の市町村の保健センターおよび保健所で働く保健師を対象として、在住外国人への母子保健サービス提供に関してその現状と課題を検討した。 愛知県の市町村保健センターまたは保健所に所属し、現在あるいは過去に母子保健を担当していた保健師666名に質問紙を送付し、390名(回収率58.6%)から回答を得た。検定には単純集計及びPearsonのχ2検定を行った。 「外国人支援の満足」については、「満足している」が4.5%、「満足していない」が55.5%であった。「保健師独自の工夫」については、「工夫している」が41.5%、「工夫していない」が50.5%であった。「今後の外国人支援に必要な母子保健サービス」については、複数回答で「多言語資料の充実」が69.7%、「通訳の配置」が63.8%であった。保健師の満足度に影響を及ぼす要因として有意差が得られた項目は「新生児訪問で外国人に受け入れられたと感じたか」(P=0.037)、「乳幼児健康診査で外国人に受け入れられたと感じたか」(P=0.001)、「通訳の利用の有無」(P=0.002)、「外国人対応の姿勢」(P=0.028)であった。 本研究結果から、保健師は在住外国人に対して満足のいくサービスを提供できていないという現場の葛藤がうかがえた。保健師が在住外国人への支援に満足できるためには、母子保健サービス提供の場において、より一層の通訳の利用、多言語資料の充実が求められる。また、支援を行っていくためには保健師が外国人に積極的に対応する姿勢や気持ちが重要であることが考えられた。今後、在住外国人に対してより充実した保健サービスを提供していくためには、保健師が外国人支援を学ぶための学習環境の整備も必要であると考えられる。