目的 管理栄養士養成校等の学生、国際保健分野の大学院生等の若手および国際協力における栄養活動の経験者等を対象として、キャリアの段階別に国際栄養分野の研修・教材のニーズについて把握することを本研究の目的とした。 方法 本研究では、フォーカスグループディスカッション(FGD)及び質問紙調査を実施した。FGDは、2008年10月に第23回日本国際保健医療学会の自由集会にて、質問紙調査は同年9月に、2道県の学生を対象として実施した。FGDでは、参加者をキャリアの段階別にa)将来、国際協力にて栄養活動を潜在的に担う可能性のある学部生の集団(以下、「学生」)、b)国際保健を専攻する大学院生および社会人。栄養分野の研究や活動を通して国際協力に携わっている、又は携わることを希望する集団(以下、「若手」)、c)青年海外協力隊や国際協力機構の専門家、NGO、国際機関等の組織で、既に栄養部門の国際協力業務に従事している、または従事したことがある集団(以下、「経験者」)の3グループに分けた。FGDおよび質問紙調査の結果は、KJ法を応用して分類し、一覧表を作成した。 結果 FGDの参加者は、「学生」2名、「若手」4名、「経験者」7名であった。質問紙調査は119名より回答を得た。国際保健・栄養分野で学びたいことについて、「学生」及び質問紙の回答により、途上国の食や保健・医療の現状、途上国における人材のニーズがあげられた。「若手」と「経験者」は、具体的な課題を指摘し、そのアプローチ法について学びたいと考えていた。身につけたいスキルについて、「学生」、「若手」及び質問紙の回答では、英語能力の向上があげられ、「若手」と「経験者」は現場理解、コミュニケーションスキルをあげた。国際協力の仕事に就くために必要な経験について、いずれのFGDのグループ及び質問紙の回答においても、日本での栄養士としての現場経験があげられた。加えて、「若手」では海外での経験、「経験者」では異文化への適応力および対人スキルという意見も出された。 結論 本研究により国際栄養分野において、語学等、コミュニケーションスキルのようにキャリアの段階共通のニーズが認められた一方で、キャリアの段階別に異なるニーズもあることが明らかになった。「学生」においては、途上国の現状理解のための教育ニーズ、「若手」及び「経験者」においては、現場で必要とされる知識・スキルおよびこれらを習得するための研修ニーズが確認された。わが国における国際栄養分野において、キャリアの段階別に特性・ニーズに合致した研修・教材の開発が急務と考えられた。