背景 国際社会の中で、現在一番大きな開発枠組みである「ミレニアム開発目標(以後MDGs)」には目標が8つ掲げられている。その中で、3つは保健医療分野に直接、関係がある。日本国際保健医療学会は、MDGsの進捗状況には高い関心を持ち、学会のセッションでも取り上げてきた。また、厚労省科研の一つである中村班1) の研究の中でも日本国内外の情報を収集し課題を分析した。以下、その主な点を挙げる。この時点で、「資料」としてまとめた理由は、2013年が、2015年以降の開発枠組み(ポストMDGs)のプロセスの中で、かなり重要な年になりそうだからである。様々な会議や専門家のラウンドテーブルなどが国連でも各国レベルでも開催され、実質的な協議や交渉が想定され、2015年以降の開発枠組みの方向性が策定される見込みが出てきた。2015年に国連が主催するMDGsサミットはやや形式的になり、2012-13年以降に議論・交渉された様々な内容を公式に追認するプロセスとなることが予想される。 目的 ミレニアム開発目標(MDGs)の達成年である2015年を迎えるに当たり、国内外の有識者やユースグループらとのインタビューを通して、以下の2点を明らかにする。 ①現在のMDGs、特に保健医療分野に関連するMDGsの評価についてまとめること。 ②2015年以降の開発枠組みについて、得られた情報・知見をまとめること、さらに、学会をはじめとして政策立案者や一般市民と共有すること。 方法 In-depth Interview形式をとり、14人の専門家に上記目的の2点について、自由に質問に答えていただいた。調査は2012年7月から12月にわたって実施した。インタビュー対象者2) は幅広く保健医療、特にグローバルヘルス分野に関与している有識者らである。 結果 ①MDGsは様々な課題もあるが、グローバル社会として共通の開発目標を持ったことは、開発を推進する上では有効であった、とするコメントが多数であった。 ②グローバルヘルスの基本概念を重視・継続することを含めて2015年以降の開発枠組みに関する多くの提言を得た。 結論 i) 2015年秋の国連サミットまで継続的なフォローアップの必要性、 ii)広報の重要性、 iii)学会の役割に対する期待、 などが導かれた。