1954年に138人の研修員を日本へ受入れて以来、国際協力機構(JICA)は、2011年までの57年の間に、本邦研修として累計27万人以上の研修員を途上国から受入れてきた。 本研究は、本邦研修の意義の有無、研修員にとって有用な学びとなる日本の知識や技術、帰国後自国で活用できる日本の知識や技術、活用する際に寄与した要因と課題を検証することを目的とする。 JICAにメールアドレスが登録されていた、インドネシア601名、ラオス264名の帰国研修員に質問紙を送付し、インドネシア116名(回収率24.4%)、ラオス65名(回収率31.9%)から回答を得た。また、JICA関係者の推薦を通じ、Snowball sampling方式でコンタクトがとれた、インドネシア28名、ラオス15名の帰国研修員に対しインタビューを行った。 質問紙調査を通じて、多くの回答者が本邦研修の意義として、「日本の現場を視察して現状を理解できた」、「日本の最新の知識を得ることができた」、「日本の技術の発展の経緯を学ぶことができた」、ことを挙げていた。 本邦研修で学んだことが仕事に役に立ったかどうかについては、『技術』に比べて、『知識』のほうが役立ったと回答した研修員の割合がやや多く、今回の調査結果をみる限り、日本の『知識』のほうが『技術』に比べて有用であったということができる。 一方、日本で得た知識や技術を十分活用できない理由として、両国ともに、予算の問題が最も多く、続いて日本の状況が自国の状況と異なる、施設や設備が整っていないという理由が挙げられた。 また、インタビュー調査結果より、大半の研修員が、日本で学んだ技術や知識を帰国後に積極的に活かしているというグッドプラクティス事例を持っていた。その要因として、研修員のニーズと日本側が紹介したリソースが合致した、研修の中で研修員による内発的な新しい学びや気づきがあった、研修員と日本人講師との間で帰国後も交流が続いている、ことが考えられた。 本邦研修で学んだことを、帰国後途上国において普及・伝播させていくためには、JICAは、途上国にとっての適正技術を丁寧に確認し、普及・伝播の過程で途上国が必要とするサポートを継続的な対話を通じて行う必要があると考えられた。