従来の相互作用論におけるパーソナリティは質問紙法で測定され,動態的相互作用という時系列変化過程を測定していなかった。本研究は,コンピュータ制御による相手との相互作用過程から動態的個人特性を測定し,従来の質問紙法による静態的指標と比較した。課題では,コンピュータ内の相手が反省エネ行動を繰り返し行う中で,被験者に省エネ行動と相手との友好関係維持という二律背反の目標を与えた。対人協調・非協調行動と対人友好感情評定値の時系列変化を測定し,この2変数相関を個人で求めて動態的個人特性とみなし,得点から高・低群に分類し,各群の代表的時系列特徴を主成分分析で求めた。実験条件には,相手が反省エネ行動を反復することを共通として,相手の攻撃的口調条件と非攻撃的口調条件とを設定した。結果として,対人友好感情評定値の時系列変化が動態的特性の高・低群と各実験条件とで変化傾向が異なり,相手の表面上の口調の影響と,口調と反復される反省エネ行動との一致感の認知の影響を受け,それが時間経過で変化する傾向が示された。動態的指標と静態的指標とを比較したところ,実験条件を通じて一貫した相関は確認されず,動態的指標が質問紙法で測定できない独自の個人特性を表現している点が示された。今後も動態的相互作用に基づく個人特性の測定研究が多くなされる必要がある。