全国15地域の一般市民772名に対する社会調査によって,社会的公正感,政府に対する信頼,公共事業政策に対する評価などを測定し,それらの間の関係を分析した。公正感,政府に対する信頼,公共事業政策などに対する評価は全体として厳しいものであった。公共事業政策評価は事業そのものの評価と事業主体である行政の評価に分かれること,前者に関しては肯定的評価と否定的評価が独立性の高い別次元となることなどが見いだされた。また,政府に対して一般的信頼を持たない回答者が公共事業政策をあらゆる面で否定的に評価する傾向が見られ,このことは,人々がヒューリステックな政策評価を行っていることを示唆している。また,政府に対する一般的信頼は,ミクロ,マクロ,地域,職業の4水準における社会的公正感によって強められることも確認された。このことは,社会集団内において自分が公正に扱われていると感じるかどうかが集団の権威者(例えば,政府)に対する態度を規定するとする公正の絆仮説を再確認するものであった。