特定の対象への接近あるいは回避の身体的動作を反復することにより,その対象に対する潜在的態度が変容することを検討した。まず,IAT(Implicit Association Test)によって楕円と四角に対する潜在的態度を測定した(Time 1)。続いて,楕円あるいは四角が描かれたカードを分類する課題を行った。参加者はカードを一枚ずつめくり,描かれた図形に応じてそれらを分別した。楕円接近条件では楕円のカードを手前側に置き(i.e.接近),四角のカードを向こう側に置く(i.e.回避)ことによって分類し,四角接近条件ではその逆であった。この作業の後,Time 1と同じIATを実施した(Time 2)。事前・事後の測定値を比較したところ,接近した対象にはより肯定的な方向に,かつ回避した対象にはより否定的な方向に潜在的態度が変化していた。したがって,接近行動の反復は対象とポジティブな感情価の連合を強化する一方,回避行動の反復は対象とネガティブな感情価の連合を強化する効果があると考えられる。この結果にもとづき,非意識的な態度変化のプロセスや,潜在的態度と顕在的態度の関係性などについて議論した。