本研究の主な目的は,小学校高学年(5,6年生)を対象に,学級内の仲間集団に焦点を当て,仲間集団内における個人と集団の他成員との双方向による役割期待遂行度が,関係満足度に与える影響を検討することであった。予備調査では,10項目からなる仲間集団関係満足度尺度の作成を行った。本調査では,予備調査で作成した尺度を用いて,個人が他の集団成員にもつ役割期待に対する他成員による遂行度と,集団の他成員が個人にもつ役割期待に対する個人の遂行度,仲間集団内地位が仲間集団関係満足度に及ぼす影響について性差,集団サイズを考慮して検討した。その際,役割期待項目の個人および,仲間集団の他成員が捉える重要性の重みづけを行った。階層的重回帰分析の結果,性差や集団のサイズにより違いが見られ,男子および小集団では,個人と集団の他成員が一致して重要と捉える役割期待が多いこと,女子および大集団では一致した役割期待における集団の他成員がもつ役割期待に対する個人の遂行度の高さ,さらに大集団においては,個人が重要と捉える役割期待における個人がもつ役割期待に対する集団の他成員の遂行度の高さおよび仲間集団内地位の高さも加えて関係満足度を高く予測していることが示された。