近年,わが国における若者の間には,フリーターとしての生き方や働き方を肯定的に受けとめる傾向がみられるようになった。本研究は,こうしたフリーターに対する肯定的態度を測定し,その下位構造について明らかにすること,ならびに,結果期待(フリーターのメリット,デメリット)からフリーターに対する肯定的態度への規定力について検討することを目的とした。調査対象は,関東圏の大学,短期大学,専門学校へ通う学生とし,588名より得られた有効回答を分析したところ,以下の結果が得られた。はじめに,フリーターに対する肯定的態度の構造について検討するために探索的因子分析を行ったところ,「貢献承認」,「プロセスとしての受容」,「積極的受容」の3因子が抽出された。つづいて,結果期待からフリーターに対する肯定的態度への規定力を検討するために構造方程式モデリングによる因果分析を行ったところ,フリーターは社会経験になるというメリットの予測が,3つのフリーターに対する肯定的態度へ正の影響を及ぼしていた。一方,フリーターの経歴が将来のキャリア形成にとって支障になるであろうというデメリットの予測は,プロセスとしての受容にのみ負の影響を及ぼしていた。すなわち,若者のフリーターに対する態度を規定する要因として,結果期待による影響力が確認出来た。これらの結果から,フリーターという進路に付随するメリットやデメリットを正確なかたちで予測させるような働き掛けにより,若者層のフリーターに対する考え方が変容し得ることが示唆された。