本研究は,達成動機づけと締め切りまでの時間的距離感が計画錯誤に及ぼす影響について検討した。計画錯誤は,課題の遂行を楽観的に予測するために生じるといわれている。先行研究は,予測時の動機づけが予測を楽観的にし,また時間的距離感は楽観的予測を調整することを示唆している。そこで本研究は,48人の参加者に動機づけの操作のための乱文再構成課題(達成プライミングvs.誘惑プライミング)と期末テストまでの時間的距離感に回答してもらい,また期末テストのための勉強時間を予測してもらった。その後,テスト当日に,実際に行った勉強時間について回答してもらった。その結果,達成プライミング条件の参加者は,誘惑プライミング条件の参加者に比べて,勉強時間をより楽観的に見積もり,計画錯誤が生じていた。またこの傾向は,時間的距離感により調整されており,テストまでの時間的距離感が遠い場合にのみ,この傾向はみられた。最後に,計画錯誤における動機づけと時間的距離感の影響および今後の研究の可能性について考察した。