本研究では,親しい他者,親しくない他者を選択する際の特性自尊心の影響について,および選択における社会的拒絶の調整効果について,杉浦(2003)の説得納得ゲームを用いて検討した。ゲームは90名の大学新入生を対象に実施した。ゲームの特徴を利用し,説得者が説得した人数を従属変数として,セッション1(S1)とセッション2(S2)の説得者を別々に分析した。その結果,S1の他者選択(すなわちゲーム開始直後)では,高自尊心者は低自尊心者よりも親しくない他者との相互作用を多く選択することが示された。同様の効果は,親しい他者の選択においては認められなかった。このような自尊心の影響に加え,S2の他者選択では,S1納得者の際に他者から相互作用を求められる頻度,すなわち社会的拒絶の経験の有無によって,他者選択が調整されることが示された。特に,拒絶を経験した群において,高自尊心者は低自尊心者よりも親しくない他者を積極的に選択することが示された。このような効果は拒絶を経験していない群においては認められなかった。さらに,親しい他者の選択においても認められなかった。これらの結果を踏まえ,特性自尊心が社会的状況における対人選択に及ぼす影響について,さらに社会的拒絶が及ぼす影響について議論された。