本研究の目的は,支援という枠組みにおける支援者と被支援者との相互作用において専門職支援者が用いた人間関係形成の方法と,その関係形成のプロセスを明らかにすること,さらに,それらを踏まえて,地域の支援の仕組みの望ましい形を提示することである。対象とした支援場面は地域の仕組みづくりであり,そこでの専門職支援者は保健師,被支援者は地域住民とした。データ収集は,市町村に所属する保健師20名を対象として,半構成的面接法を用いて行った。分析は,面接内容の逐語録をデータとし,Modified Grounded Theory Approachを用いて質的・帰納的に行った。分析の結果抽出された37の概念から,【関係づくり前】【内向きの関係づくり】【外向きの関係づくり】【関係の維持と新たな関係開発】【形成された関係の評価】という5つのカテゴリが生成された。ここでの相互作用は,保健師と住民,住民と住民,住民と行政組織や専門職・専門機関等の他者,保健師と他者との関係形成が図られる中で,住民や地域社会の課題を解決するための地域の仕組みを構築しようとする過程であった。また,当初は支援者である保健師が中心となって行っていたことも,関係が形成される中で住民中心へと変化する等,住民をエンパワメントする過程でもあったといえる。人間関係形成と,その形成過程の中で行われる課題解決,住民のエンパワメント,それらの経験の蓄積は,いずれも円環的に結ばれていたと考えられる。