本研究の目的は,関係に対する展望が対人コミュニケーションに及ぼす影響を関係継続の予期と関係継続の意思の観点から検討することである。先行研究では,実験操作による外発的な関係継続の予期に注目していた。そこで本研究では,自発的に生起した関係継続の意思に注目して,これらの関係に対する展望が対人コミュニケーションに及ぼす影響の共通点と相違点を調べた。未知関係20組40名と,友人関係25組50名の大学生が実験に参加した。結果は以下のとおりであった。先行研究と一致して,これからも関係が続いていくと思うときは,コミュニケーションの動機づけが促進されて,対人的志向性の個人差が消失した一方で,その場限りの一時的な関係と思うときは,社会的スキルの高い人ほど,積極的にコミュニケーションに取り組んでいた。また,先行研究では,関係継続の予期があるときは相手を知るために視線量が増加したのに対して,本研究では,関係継続の意思があるときは発話量が増加して,対人コミュニケーションをポジティブに認知していた点が異なっていた。そして,関係継続の意思が対人コミュニケーションに及ぼす影響の程度は,友人関係よりも未知関係において大きかった。