自己判断の合意性を自ら高く推測することが,脅威に晒された自己肯定感を修復する効果について検討した。自己脅威として架空の施策について反態度意見の表明を促した(強制承諾)後,自己判断についての合意性を推測させた。実験前後にその施策への態度を測定し,態度の変化量を従属変数とした。認知的不協和に陥った人は表明した意見に合わせて態度を変化させるが,自己肯定感が修復すると態度を変化させる程度が縮小することが知られている。そこで,自己判断の高合意性推測が自己肯定感を修復するなら,合意性を高く推測すると態度変化量が縮小すると予測された。また,高自尊心者は脅威に対して直接的,低自尊心者は間接的自己防衛方略を採ることから,自己肯定感修復に用いる合意性と脅威との関連度合いは自尊心の高さによって異なると考えられた。結果はこれを支持し,脅威と関連する判断の合意性の場合(実験1)には高自尊心者で,脅威と関連しない判断の合意性の場合(実験2)には低自尊心者で,合意性を高く推測すると態度変化量が縮小する傾向がみられた。自尊心の高さによって修復に用いる合意性と脅威との関連は異なるが,合意性を高く推測すると自己肯定感が修復されることが示唆された。