本研究は不充分な正当化により惹起される不協和の効果とそれの発生する付加的条件を分析的に解明することを目的とする. Freedman (1963) は魅力を欠く作業を行なうことに対する正当化が少ない場合作業への好みが増大する “不協和効果” は, その正当化が作業に先だって与えられた場合に限って現われることを見出したが, 作業自体が著るしく魅力に乏しいものであれば作業後に正当化が与えられた場合でも “不協和効果” が生ずることが仮説され, 二つの実験が行なわれた. 実験Iでは連続10分間休憩なしに加算作業を被験者に行なわしめることにより不快な興味に乏しい作業が創出され, 実験IIでは先行実験と同じく乱数を記入する作業が用いられた. 正当化の程度とそれを与える時期はFreedman (1963) に大略準拠して操作された. 実験Iでは正当化を与える時期に拘らず正当化の程度が小である時にはそれが大である場合よりも有意に (p<. 01) 作業は魅力あるものと評価された. 一方実験IIでの作業は実験Iの作業よりも元来魅力のあることが判明し, ここでは正当化の程度とそれを与える時期との交互作用は有意 (p<. 01) で, 作業前に正当化が与えられる時にのみ “不協和効果” が得られ, 先行諸実験の結果と一致した. これらは上記の仮説を支持するものである. 以上の結果に関連して, 発生した不協和の低減手段および正当化の時期と不協和発生の有無について若干の論議がなされた.