MASにより顕現性不安水準 (高不安H, 中等度不安M, 低不安Lに区分) を測った女子学生を用いて, H-M, M-M, L-Mの組み合わせ, 各6組による2人討論場面を設定した. TAT図版を討論の手がかりとし, 討論時間は1日1セッション24分間で, 日間間隔2日で4セッション反復した. 各組の二者は隔離小室に入り, したがって, 言語によってのみコミュニケーション可能な事態での討論過程を, 二者の同時沈黙CS, 二者の同時発言CTの2つの指標にもとつく結果から考察した. 得られた主な結果は次の通りである. 1. 一般に討論過程の進行にともない, 言語活動性は増大するが, 特にH-M, L-Mのように二者間に不安水準の差異のある群においてその力動性が顕著である. 一方, M-Mでは初期の活動水準をそのまま以後のセッションにおいても維持する傾向があった. 初期の活動性の大小関係は, M-M>L-M>H-Mであるが後半のセッションではその関係が変動してL-M>M-M>H-Mとなった. とくに, 初期におけるH-Mの活動性の低下が認められた. CTでは, 3群間に差は見られず, セッションの進行にも影響されない. また, 個々の群においても, H>M, M>Lのような活動性における大小関係が明らかに認められた. 2. 面識条件 (討論実験前後に面識の機会を与える) は, 二者間の不安水準の差による群内の言語活動性の大小関係を不鮮明にする働きを有している. ただし, M-Mでは, この条件に関係なく, 活動性水準の安定性がみられた. 以上の結果に対して, 次のような考察を加えた. 二者間の不安水準の差異の有無は, 一 種の不均衡, 均衡状態と考えることができ, 討論場面で発現する活動性は, 緊張解消への力動性の表われと考えることができる. このことは, Taylor, H.F. が試みているように, 従来の均衡理論に沿って理解することも可能である. さらに, 言語活動性は不安水準と正の直線的相関関係も示されたことから, Taylor, J.A. らの不安の活性化動因仮説の適用可能性も示唆された.