本研究は, 原岡が先に提案した態度変容過程のダイナミックス, すなわち, 抵抗の段階, 変容準備段階, 不安定不均衡段階, 再体制化の段階, 安定強化の段階の5段階と, それに伴なう不安度の変化との関係を実証しようとしたものである. これまでの研究と異なるところは, 不安度の測定を質問紙による測定の他に, 生理的変化の測度としてGSR反応を用いた点である. 被験者は大学生で, 男子50名, 女子19名の計69名であり, これらを3つの実験群に分けた. 態度対象は被験者に共通な関心事である「英語の重要性」と「教養課程における英語授業での指名回数」であった. 態度変容の実験操作は説得的コミュニケーションを用いた. 各実験群はコミュニケーションの量と質において異なっていた. すなわち, 第I群, 第II群, 第III群の順にコミュニケーションの量が増し, 第I群は英語の重要性についての情報, 第II群はそれに加えて自己の実力の評価に迫る訴え, 第III群は, さらに安定強化情報を提供するように計画された. したがって, 態度変容は, 第I群から第II群を経て第III 群に至るような過程を通るものと仮定された. 態度測定としては, 英語の重要性, 適切な指名回数と許容範囲の3つを行ない, その変化を測定した. 不安度の測定は質問紙調査とGSR反応の測定とによった. また, 不安変化の型に基づいて, ∩字型不安群と漸減型不安群とに再分類し, 態度変容を比較することによって態度変容過程と不安度との関係をさらに明確にしようとした. 主な結果は次の通りであった. 1) 実験群は全体として, 説得された方向に態度を変容していた. 2) 実験条件別態度変化では, 自我に迫るような説得的コミュニケーションを受けた集団が態度変化が大であり, 不安度も高まることがわかった. 3) 説得的コミュニケーションを受けて不安度を高め, その後で不安を減少させた∩字型不安群は, コミュニケーションを受けても不安度を高めない漸減型不安群よりも有意に大きな態度変化を示していた. 4) 以上の結果より, 態度変容過程と不安度の関係に関する仮定, すなわち, 抵抗の段階, 変容準備段階, 不安定不均衡段階, 再体制化の段階, 安定強化の段階の5つの段階を通って変化する態度は, 第3段階の不安定不均衡段階に近づくにつれて次第に不安度を高め, その後, 高まった不安を次第に減少させて安定強化することが確認された.